研究代表者挨拶
前研究代表の植木浩二郎先生から研究代表を引き継ぎました国立国際医療研究センター糖尿病研究センターの大杉です。
糖尿病治療は、細小血管症や大血管症に加え、認知症やがんのリスクを増大させ、患者の寿命や健康寿命を損なうことが知られており、その発症や重症化および合併症の防止が大変重要になっています。現在、新しい治療薬が次々に開発され、その合併症抑制の効果などが大規模臨床試験から示唆されている薬剤も出てきています。しかしながら、ほとんどが海外で動脈硬化の進行例に対して実施されている試験であり、糖尿病や大血管症の病態が大きくことなる我が国の糖尿病診療にそのまま適応できるようには思われません。そもそも我が国における糖尿病患者の合併症の発生頻度や、その危険因子についても必ずしも明らかになっていません。
糖尿病標準診療テンプレートと呼ばれる入力システムを用いることで、参加する全ての施設において、個々の患者さんの検査情報や薬剤情報のみならず、合併症情報も一括で取り込み、比較検討することができるようになっています。また、標準化されたカルテを用いることによって糖尿病診療の質の改善も望まれます。日本医療情報学会の先生の多大なご協力のもと、研究や診療のより効率的で標準的な基盤を確立する事業として進めています。
本事業は2014年度から厚生労働省科学研究費事業として開始し、翌2015年度からはAMED研究費をいただき、日本糖尿病学会の呼びかけのもと、現在全国59病院が参加しております。10万人以上の症例登録を目指しており、最終的には100施設の参加を目指し事業を推進しています。
大規模なデータベースが構築できることで、従来の臨床研究では実現が難しかった我が国の糖尿病患者における合併症のリスク因子の同定やその有効な予防法の確立などの研究の実施が可能になります。日本糖尿病学会の会員の先生方や製薬企業の方々の研究に大いに活用して頂ければと考えています。また、日本医師会が実施しているかかりつけ医の糖尿病データベース研究事業J-DOMEや、日本腎臓学会の大規模データベースJ-CKD-DBとなど関連疾患データベースとも連携をはかって行く予定です。
J-DREAMSを推進することによって、日本の糖尿病研究が発展し、日本の糖尿病診療の質が向上することによって、国民の健康に寄与できるものと考えております。より大規模な全国的なデータベースの構築に向け、先生方の協力を賜ればと考えております。本事業にご協力を頂けますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター長
大杉 満